【再掲載】ミアシャイマー教授の攻撃的リアリズムを学ぶ(後篇)

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反逆する武士
uematu tubasaです。

~~~~~以下はJBPressより~~~~~

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42519

日本は米国から「見捨てられる」のか?
ミアシャイマー教授の「攻撃的リアリズム」が示す未来(後篇)

2014.12.26(金) 福田 潤一

米国の国際関係論における「攻撃的リアリズム(offensive realism)」の泰斗として名高いJ.ミアシャイマー(John J. Mearsheimer)教授(シカゴ大学)が12月半ばに日本を初訪問し、各地で日本の有識者と意見交換の機会を持った。

 教授の「攻撃的リアリズム(offensive realism)」は、国家は生存のために際限のない拡張行動を採ることが求められるという考え方である(前篇「中国と米国はいつか必然的に衝突する」参照)。教授はそれに基づいて、米中が必然的に衝突すると主張する。また、いずれ米国は台湾を防衛できなくなり、台湾を見捨てて中国に強制的に統一されることを許容せざるを得なくなる時が来るだろう、とも予測する。

 (教授は今年春、米国の『ナショナル・インタレスト』誌に「台湾にサヨナラを言おう(Say Goodbye to Taiwan)」という論文を掲載し、大きな注目を集めた。)

 しかし、ミアシャイマー教授のこうした議論は、日本の有識者にとっては必然的に次のような疑問を生み出すことになる。すなわち、「米国がいずれ強大化する中国の国力に対抗できなくなって台湾を見捨てると言うのであれば、米国は同様に日本もいずれ見捨てるのではないか」という疑問である。

 日本について、ミアシャイマー教授はこれまで特に詳しく言及を行ってきたわけではい。そのため、攻撃的リアリズムが今後の米国の対日政策についてどのような含意を持つのかは必ずしも明瞭であったとは言えなかった。今回の教授の初来日で、日本側の関係者が特に関心を持っていたことは、日本に対する米国の政策について教授がどのように考えているのか、という疑問への回答であった。

敵対勢力と宥和して秩序安定を目指す米国のリアリズム

 歴史を振り返れば、米国におけるリアリズムは、しばしば敵対する他の勢力との宥和を正統化するためのロジックとして使われてきた経緯がある。そして、その代償として、米国が同盟国や友好国を「見捨てる」行動に繋がってきた過去がある。

例えば典型的には、「古典的リアリスト」とされるH・キッシンジャー(Henry Kissinger)が追及した米中和解がそれに当たる。キッシンジャーはベトナム戦争から撤退するための外交的方策として米中和解を促進したが、その一方でニクソン政権は、同盟国の防衛は同盟国自身が責任を持つべきとする「グアムドクトリン」に基づき、同盟国に戦略核抑止以外の防衛について主たる責任を担うよう、迫ったのである。

 このようにリアリズムは、敵対する勢力との宥和を実現することで“勢力均衡”や“大国間協調”と呼ばれる状況を作り出し、国際秩序を安定化させることに力点を置く傾向がある。現在でも、例えばイランに対する核交渉を通じた宥和がリアリストから提言されることは珍しくないし、ミアシャイマー教授自身もウクライナに関してはロシアの戦略的利益に配慮せずにNATO東方拡大を行ってきたことがウクライナ危機の原因である、と西側諸国を激しく非難する主張を展開している。

 そのため、強大化する中国に対抗できない米国は、いずれ台湾と同様に日本も「見捨てる」ことになるという主張をミアシャイマー教授は展開するのではないか、という懸念を、日本の関係者は持ったのである。

なぜ米国は日本を支援すべきなのか

 そこで、筆者は特にこの点について教授の見解を深く追求してみることにした。その結果、大変興味深いことに、教授の考えは実は「日本を見捨てる」こととは正反対であることが明らかになったので、ご紹介したい。

 そうは言っても、導入のシンプルな問いに対する教授の答えはやはりシンプルなものであった。筆者が最初に「中国がますます強大化していく状況の中で、米国はいずれ台湾と同様に日本を見捨てる可能性があるか」という趣旨の質問をしたところ、その答えは「イエス」という率直なものだったのである。

 しかし詳しく聞くと、それはもし中国がアジアにおいて地域覇権を達成する状況ならば、米国としてはもはや同盟国を防衛するだけの力を失っており、他に選択肢はないわけであるから、現実を受け入れるほかはない、と言う意味での「イエス」であった。すなわち、ミアシャイマー教授自身は、必ずしも積極的に「米国は日本を見捨てるべき」だとか、「中国との宥和を追求するべき」だなどと述べてはいないのである。

むしろ逆に教授は、中国が米国による介入が不可能になるほどまでに地域で強力になる時が来るまでは、米国は中国のアジアにおける地域覇権実現の野望を阻むため、あらゆる手段で中国への対抗措置を採るだろう、と明言した。その観点でミアシャイマー教授はオバマ政権の「アジアへの軸足展開(Asia pivot)」を非常に高く評価しており、特に日本への支援を極めて重視している旨を明らかにしたのである。

 しかし、これは別に日本の防衛そのものが米国にとっての国益になるからではない、教授は述べる。「日本の防衛は米国にとっての死活的国益に含まれるのか」という筆者の問いに対する教授の答えは興味深いものであった。「そうではない。米国の死活的国益は中国がアジアで地域覇権を実現することを阻止することだ。日本の防衛はそのための手段に過ぎない」。教授はあくまでも理論的見地から日本の防衛に米国がコミットすることを支持したのである。

「台湾にサヨナラを言おうとは言っていない」

 「台湾を見捨てる」という教授の議論についても質問した。日本と台湾の安全保障は本質的に結びついており、台湾を失えば日本は中国に第1列島線の突破を許すし、日本のシーレーンも危うくなる。そうだとすれば、「台湾にサヨナラを言う」ことは実は「日本にサヨナラを言う」ことでもあるのではないか。「台湾にサヨナラを言おう」という教授は、本当に米国が日本を「見捨てる」ことはないと考えているのか。この問いへの教授の答えはやや意外なものであった。

 ミアシャイマー教授は、「自分は実は台湾にサヨナラを言おうとは言っていない」と述べたのである。実を言えば教授が元々つけた論文のタイトルは全く別のものであった。実際に、紙媒体の雑誌論文の方は、教授のオリジナルタイトルが付けられている。しかし、電子媒体に転載する際に、編集者が断りなく勝手に変えたのだそうである。そのため、教授が「台湾にサヨナラを言おう」と提唱しているかのような印象になってしまった、とのことであった。

 実際には、ミアシャイマー教授は遠い将来には台湾が「香港戦略」を採用せざるを得なくなる状況が到来する可能性があると見ているが、それまでは米国は中国の地域覇権実現の阻止のため、様々な対抗策を採るだろうと見ている、と言う。

教授は、台湾は中国の一部であるのに対して日本はそうでないために、両者の間には質的相違があると述べたが、それでも台湾防衛が日本防衛に不可欠ならば、日米は相応の対応をするだろう、と指摘したのであった。

米国によるアジアでの「オンショアバランシング」を提唱

 上記に関連して、さらに筆者は次の質問を行ってみた。すなわち、「攻撃的リアリズムが提唱する米国にとっての大戦略(grand strategy)とは何か。その中でアジアはどう位置付けられるのか?」というものである。

 これは、米国はいかなる大戦略に基づいて、アジアにどのような姿勢で臨むことになるのか、という疑問に等しい。これに対する回答も大変示唆に富むものであった。

 まず、大前提として、攻撃的リアリズムが米国の伝統的な大戦略であると見なしているのは、「オフショアバランシング(offshore balancing)」である。「オフショアバランシング」とはその名の通り、「オフショア=沖合」から「バランシング=脅威に対する対抗行動」を行う、という意味である。

 すなわち、「米国が地域の諸国に、潜在的な地域覇権国への対抗の主たる責任を転嫁し(buck-passing)、自身は地域の諸国が対処できない場合のみに『沖合』から対抗行動を採る」という大戦略を指している。

 しかし、これは地域の諸国にとっては、米国の関与が沖合に後退していくのと同じである。見方によっては、これは米国のいわゆる「新孤立主義」(neo-isolationism)に近く、同盟国がどうしようもないところまで追い込まれてからでないと米国の関与が期待できない、という意味において、米国に「見捨てられた」という感覚を地域の諸国に抱かせるものである。実際、C・レイン(Christopher Layne)のような論者はこうした意味での「オフショアバランシング」を米国が採用すべきだ、と提唱している。

 ならば、ミアシャイマー教授はどのような大戦略を米国に提唱するのか。この疑問に対するミアシャイマー教授の回答は興味深いものであった。すなわち、アジアにおいては、米国は地域の諸国が米国の関与なしでも中国の地域覇権の実現を阻止できるとは考えられない。そのため、米国はこの地域で「オンショアバランシング(onshore-balancing)」を行う必要がある、と明言したのである。

「オンショア」とは「オフショア」とは正反対の「陸上の」という意味である。すなわち、彼はアジアで米国が採用すべきは、米国が沖合に後退しない大戦略である、と断言したのである。

 しかしながら、同時に彼は欧州やペルシャ湾岸においては「オフショアバランシング」を米国の大戦略として提唱するとも述べた。それゆえに、ウクライナを巡る紛争や、イスラム国の掃討に米国が軍事的関与をするのは愚かなことであるとも述べた。

 では、これらの地域とアジアを分ける要因は何か。その質問には、彼は「地域の諸国が、米国の関与なしでも潜在的な地域覇権の台頭を阻止できるか否かである」と回答したのであった。

 すなわち、ミアシャイマー教授の考え方に基づけば、欧州やペルシャ湾には、米国が軍事的に関与すべき死活的な国益が存在していない、ということになるのである。ロシアやイスラム国といった勢力は、放置していても米国の生存を脅かす地域覇権になる可能性はなく、地域の諸国に任せておいても大丈夫だというわけである。しかし、アジアにおける中国は地域諸国に任せておいてもその台頭を阻めず、米国の死活的国益を脅かす強力な存在になる可能性がある。だから「オフショアバランシング」ではなく、「オンショアバランシング」が必要だと喝破するわけである。

 ならば、ミアシャイマー教授は昨今の新孤立主義的な米国の外交政策を巡る議論、例えば「撤退(retrenchment) 」論などを支持することはないのか。これに対しても教授の答えは「あり得ない」という明瞭なものであった。同様に、米国は台頭する中国との間で勢力を共有すべく選択を行い、米中間の「アジア協調(concert of Asia)」を目指すべきだとする豪州のH・ホワイト(Hugh White)教授の論考の評価についても聞いたところ、回答は「ナンセンス」というそっけないものだった。

 「オフショア」/「オンショア」を巡る議論は、教授の中国を巡る論考において若干触れられてはいるものの、米国の日本に対する姿勢という意味では、まだ十分な見解が明らかにされているとは言えなかった。そこで、ミアシャイマー教授の考え方が上記のようなものであることが質疑を通じて分かったことは、大変貴重であった。

しかし、教授のウクライナや台湾に対する論調、さらにはイラク戦争のような米国の過去の武力行使に反対してきたという事実を踏まえれば、教授の議論が日本において「アジアにおける米国の関与を後退させるもの」という誤解を受けている可能性は大いにあり得ることである。

 そこで、筆者からは、特に日本に対する米国の姿勢に関連して、「攻撃的リアリズムは、アジアではオンショアバランシングを提唱している」旨をどこかでさらに明瞭に強調しておいた方が良いのではないか、とする意見を伝えておいた。

 教授も初の日本滞在で多くの有識者と交流した結果、特にこの点を意識していたように見えた。そのため、今後、どこかで論評が行われる可能性もある。

結論:米国は日本を「見捨てない」

 リアリストは通常、米国が死活的国益の掛っていない海外への過剰関与をすることを否定的に見る。ミアシャイマー教授がかつてイラク戦争に極めて批判的であったのにもそういう背景があった。現在の米国のアジアへの関与についても、リアリストの一部にはそれを否定的に見る傾向がある。

 しかし、ミアシャイマー教授の議論は明確にそうした見方を拒否している。中国のアジアにおける地域覇権の実現阻止は、米国にとって死活的国益の問題である。そのため、米国は中国の国力が大きくなりすぎてアジアから排除されてしまうその時までは、あらゆる手段を用いて中国への対抗措置を採り続ける、と彼は主張する。

 すなわち、ミアシャイマー教授は、米国が他に選択のない状況に追い込まれない限り、日本を「見捨てる」ことはないと明言したのである。米国のパワーの限界を指摘し、世界に対する過剰関与を戒める傾向の強いリアリストの議論ですら、米国はアジアにおいて「オンショアバランシング」の姿勢を守る、としていることは、日本人としては心強いことであると言えよう。

~~~~~以上、JBPressより~~~~~

驚愕の事実がてんこ盛りも内容で大変驚きました。

別に積極的に台湾を見捨てようという議論ではないこと、「オフショア・バランシング」ではなく「オンショア・バランシング」を採用すべきだと明言したことなどです。

これは驚きですよ。リアリストは「オフショア・バランシング」が妥当な大戦略だと主張すると思ってましたから、逆説的にいえば、それだけ中国が強大な地域覇権国家になりつつあるということでしょう。

これで安心はできません。

我が国日本は核武装するべきなのか否かに関して明言されていませんでしたから。

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平成生まれの尊皇攘夷派で、某国立大学の経済学部出身の
uematu tubasaと申します。

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『住宅資産倍増計画(仮)』
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日本核武装論の出版が中期的目標です。

核武装推進論者、ネオクラシカルリアリスト(新古典派現実主義者)、地政学の基礎は理解しております。

自主憲法制定論者(現行憲法破棄、大日本帝国憲法改正)、女系天皇公認論者、暫定的な保護貿易協定推進論者、消費税廃止論者、経済ナショナリスト、公的家賃補助導入論者、対米自立論者、日米同盟堅持論者、反特定亜細亜、移民拒絶論者。

すべての売国法案に反対しております。

基本的には政策論を中心に書いております。国会議員の事務所へ陳情します。

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好きな女性のタイプ:明るくて家庭的な日本人女性

趣味:読書(核戦略、地政学、国際政治学、経済学など)とジョギング(1日往復10kmを週に2日ぐらい)

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