北極航路の有用性を考える~~後篇~~

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反逆する武士
uematu tubasaです。

~~~~以下は東洋経済オンライン~~~~
http://toyokeizai.net/articles/-/92762
「北極海航路」の研究投資は予算の無駄遣いだ
コストも安定性も多様性も期待できない

文谷 数重 :軍事ライター
2015年11月17日
北極海航路がにわかに注目を集めている
北極海航路がにわかに注目を集めている(写真:goinyk / PIXTA)

政府は北極海航路の開発を決定した。10月16日の総合海洋政策本部会合では「官民が連携して利活用に向けた検討を積極的に行うべき」とされている。11月14日には「北極圏用の観測船を作る」といった報道もあった。

これは欧州との輸送距離の短縮と北極海の資源輸入を期待したものだ。日本からロッテルダムまでの経路はマラッカ・スエズ経由の南回りは総距離2.1万キロである。これがベーリング海峡・スカンジナビア半島周りの北極海航路であれば1.3万キロと距離は3分の2に短縮される。また、手付かずであり、売り先の少ないロシア北極圏の資源を安価に確保できる目論見もある。

だが、この北極海航路に現実味はない。その理由は次のとおりである。

安価でもないし安定的でもない

まず、コストと安定輸送で大きく不利である。この点で北極海航路は南回り航路にかなわず、実用性はない。

輸送距離短縮による効果を期待するのも間違いだ。北極海をショートカットしても、海上輸送コストはそれほど節約はできない。船舶の輸送コストについては、大雑把に言うと半分は港湾における搭載・卸下費用である。輸送経路が3分の2となり、35%ほど距離を短縮できても、実際の輸送コスト削減が距離に比例するわけでもない。

逆に増加するコストもある。船舶が北極海を通るには、耐氷グレードの船舶が必要となる。温暖化し開氷面が増えたとはいえ、北極海に結氷や流氷がなくなったわけではない。多少ぶつかっても損傷しない丈夫な専用の商船が必要となるが、その建造・維持コストが増加する分、通常商船が使える南回り航路に対して不利だ。

諸費用の負担も大きい。神戸大学の石黒一彦さんによれば「ロシアは航路使用料と案内料として総トンあたり5ドルを徴収することになっており、別に保険料金が総トンあたり2ドル掛かる」(『海運経済研究』2015年 pp.11-20.)とのことだ。

仮にヤマルにあるロシアガス田から10万トンクラスのLNGタンカーを運行するとすれば、これらの経費だけで70万ドル掛かる。対してスエズ運河の利用料は各種の価格設定や計算式があるが大型船ではトンあたり(スエズ運河トン:SCNT)でおそらく4ドル未満に留まることとは対照的である。

なによりもスケール・メリットを活かせない点で不利だ。日本郵船の合田浩之さんは「北極海航路は輸送需要からしても大型船はありえない。この点で巨大船を使える南回りに対して不利となる」(『海運』2015.2 pp.16-19.)と指摘している。

実際に海上輸送では、船体規模拡大でコスト低減を追求してきた。サイズと輸送量を倍にしても運航経費は4割も増えないためだ。そして南回りでは北極海用の3~10倍のサイズを持つようなスエズ・マックス、マラッカ・マックス、さらにはポスト・マラッカ・マックス船のような経済性を追求した超大型船を利用できるのである。

安定利用も難しい

また、北極海航路は安定利用にも問題を抱えている。まず冬期は使えない。この点で専用船舶を作っても回転率で不利であり償却は厳しい。もちろん冬期は別用途に使うとしても、商船はその経路に最適化されて建造される。運航の効率は悪い。

夏でも安定航行できるとは限らない。航路は低気圧の墓場であり、悪天候も多い。その厳しさも南回りの比ではない。海が荒れれば計画上の予定速力は出せなくなる。嵐ともなればヒーブ・ツーという船首を風に向けた超低速航行を強いられる。その日はにっちもさっちもいかない。地図上の輸送距離は短いかもしれないが、平均的な輸送日数の短縮が見込めるかは怪しいところだ。

航路支援が絶無といったリスクもある。今ではGPSでわかるので灯台は不要かもしれないが、現在位置が判ったところで海図未整備ではどこに浅瀬といった危険があるのかがわからない。また落水者や急病人、船火事等での沿岸国の救援も期待できない。

北極海航路は輸送需要に合致しないといった問題もある。今のところ日欧間で専用船を仕立てて運ぶものはない。この点も航路の実現性を怪しくする。

そもそも、海上輸送の基本となるコンテナ船には日欧直行便はない。日本発着は中国-欧州間のコンテナ輸送に便乗する形となっている。実際に欧州向けコンテナ船は、日本から中国(華南)に向かい、そこで大量の荷物を搭載し、その後シンガポールに立ち寄って、東南アジアからの貨物を載せてロッテルダムやハンブルクに向かう。その輸送需要の中心はあくまでも中国-欧州間の輸送である。ある意味、日本の分はついでにすぎない。

まず、日欧直行の北極海航路といった前提に現実味がないのである。たとえれば新幹線の仙台駅-大阪駅のノンストップ直行便を検討するようなものだ。輸送需要の中心となる東京(上海・広州)をトバして大阪までいく定期便は成り立つだろうか? 

コンテナ輸送で迅速な日欧直行便が必要なら、鉄道輸送となる。今ならシベリア・ランド・ブリッジや、将来的にはチャイナ・ランド・ブリッジが選択されるだろう。日本から欧州までの海上輸送距離が短くなるといっても、経済的でもなければ安定利用も難しく、需要に見合った経路でもない。速度で鉄道に負け、コストで南回りのスエズ・マックスに負ける。

北極圏の資源開発も確実ではない

資源輸入の面でも北極海の条件は最悪だ。今後、北極圏での資源開発は進捗は困難である。石油・天然ガスの価格は下落しているため、高コストとなる北極圏での新規開発は凍結される傾向にある。原油価格が多少上がっても、より条件のよいシェールガスやオイルの採掘や超重質油の改質が先に動き出して需要を満たしてしまう。イニシャルコスト、ランニングコスト、労働力確保、輸送費、環境問題で高くつく北極圏での採掘は後回しとなり、まずは動き出さない。

既存ガス田からの輸入でもLNGタンカーでの対日輸送は経済的かは疑問点が残る。パイプラインで不凍港に回せば耐氷の専用船は不要であり、輸送としても安定するためだ。

実際に商船三井がヤマル(ロシア)のガスを日欧に運ぶ話がある。だが、特に日本向けの長距離輸送は夏にしかできず、またLNGの蒸発損(0.6%/日)や、既述した商船サイズからのスケールメリットでの不利は大きい。この送り方は、あまり効率的な手段には見えない。

この商船三井の計画にしても、夏冬を問わず継続輸送する欧州向けのヤマル-ムルマンスク間のシャトル輸送を基本とするものであり、日本向けは臨時ボーナスを期待するものなのだろう。

以上、見てきたように北極海航路はあまり期待できないということだ。

北極海航路については、経済性とは別にリスク回避も利点に挙げられている。海賊リスクや中東での政治リスクが少ないといったものだ。

だが、残念ながらこれも現実味はない想定である。リスクとされる南シナ海、マラッカ海峡、アデン湾、スエズ運河のいずれか、あるいは全てが使えなくなっても北極海航路は選択されず、ロンボク海峡-喜望峰の南大回りが選択される。

実質的な距離の短縮は大きいが・・・

一見、南大回りは遠回りに見える。距離について日欧間ではなく、輸送実態から上海・広州-ロッテルダム間を比較すると北極海航路1.5万キロ(上海-ロッテルダム)であり、南大回りは2.7万キロ(同)になる。これだけをみればたしかに距離の短縮効果は大きいように見える。

だが、距離は倍でもやはり南のほうが有利にある。まず従来のスエズ・マックス・クラスの大型船を使えるため輸送コストは安くなる。また、足許を見たロシアに通行料を釣り上げられるおそれもない。輸送容量でみても、利用可能な船舶数も比較にならないほど多く、北極のように先導船の数で制約をうけることはない。

南大回りを補完する航路にしても、おそらくパナマ経由の東回り輸送(同2.5万キロ)が選ばれる。船幅制限と待ち時間の問題があっても、やはりパナマ・マックスを利用できる点で経済的に圧倒するためだ。

北極海航路は、どうみても現実味がないのである。たとえ開発に向けた研究を行ったとしても検討にとどまり、実用化は困難だ。であれば、あまりここで無駄遣いをするべきではないだろう。
~~~~~以上、東洋経済オンラインより~~~~

この記事は北極航路の有用性に疑問を呈するどころかほぼ否定する内容となっております。
私は海運に関しては素人ですので、素直に耳を傾けてみたいと思います。

>>輸送距離短縮による効果を期待するのも間違いだ。北極海をショートカットしても、海上輸送コストはそれほど節約はできない。船舶の輸送コストについては、大雑把に言うと半分は港湾における搭載・卸下費用である。輸送経路が3分の2となり、35%ほど距離を短縮できても、実際の輸送コスト削減が距離に比例するわけでもない。

>>逆に増加するコストもある。船舶が北極海を通るには、耐氷グレードの船舶が必要となる。温暖化し開氷面が増えたとはいえ、北極海に結氷や流氷がなくなったわけではない。多少ぶつかっても損傷しない丈夫な専用の商船が必要となるが、その建造・維持コストが増加する分、通常商船が使える南回り航路に対して不利だ。

>>諸費用の負担も大きい。神戸大学の石黒一彦さんによれば「ロシアは航路使用料と案内料として総トンあたり5ドルを徴収することになっており、別に保険料金が総トンあたり2ドル掛かる」(『海運経済研究』2015年 pp.11-20.)とのことだ。

氷に対応可能な船舶を建造しなければならず、ロシアから航路使用料を徴収されるので、逆にコストが増加すると主張されております。運送距離が短くなってもそれほどコスト削減にならないことを踏まえるならば、コスト面において不利ですね。

>>また、北極海航路は安定利用にも問題を抱えている。まず冬期は使えない。この点で専用船舶を作っても回転率で不利であり償却は厳しい。もちろん冬期は別用途に使うとしても、商船はその経路に最適化されて建造される。運航の効率は悪い。

しかも、冬季は使用不能とのこと。そりゃそうだ。安定的な航路使用ができないという点で不利ですね。

>>北極海航路は輸送需要に合致しないといった問題もある。今のところ日欧間で専用船を仕立てて運ぶものはない。この点も航路の実現性を怪しくする。

この点に関しては私も疑問に思っていました。欧州と日本の間にはそんなに需要がないわけです。
欧州でシェールオイルやシェールガスが大量に産出して、日本が主要な輸出先だというのであれば話が別ですが・・・。

>>航路は低気圧の墓場であり、悪天候も多い。その厳しさも南回りの比ではない。海が荒れれば計画上の予定速力は出せなくなる。嵐ともなればヒーブ・ツーという船首を風に向けた超低速航行を強いられる。その日はにっちもさっちもいかない。地図上の輸送距離は短いかもしれないが、平均的な輸送日数の短縮が見込めるかは怪しいところだ。

>>航路支援が絶無といったリスクもある。今ではGPSでわかるので灯台は不要かもしれないが、現在位置が判ったところで海図未整備ではどこに浅瀬といった危険があるのかがわからない。また落水者や急病人、船火事等での沿岸国の救援も期待できない。

北極航路の利点として、海賊被害の軽減が挙げられますが、北極航路そのものが危険なようです。
事故が発生した場合に周辺諸国からの支援や救助がないというのは危険極まりないですね。
南回りルートのリスクヘッジのために、北極航路のリスクを背負うというのは馬鹿らしいことこの上ありません。

海賊よりもロシア海軍の方が数段厄介な存在ということもあります。
北極航路はあきらめるべきなのかもしれません。相当説得力のある批判でした。


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平成生まれの尊皇攘夷派で、某国立大学の経済学部出身の
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基本的には政策論を中心に書いております。国会議員の事務所へ陳情します。

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